ttkkによるKORG DS-10PLUS（シングルモード6Tr6音ポリ）・KORG M01（8Tr12音ポリ）で制作された公開中のトラックを、ガジェットロン・サウンズが独自にコンパイルしたフルアルバム。かつてM01の開発元・DETUNEのUSTREAM番組でも佐野電磁氏から「でかい音で暗めなハコで聴きたい」とプッシュされた「transience」をはじめ、氏がyoutubeやSoundCloudで公開中の楽曲を網羅した集大成的な内容。

シリアスなミニマルとアンビエントハウスの併存がttkkの特色であり、前者では「flicker」「20110324」「Mesmerized」、後者においては「Suborbital」「night flow」「The Aggressor」といった楽曲が該当する。抑制された構造に対して少しずつ与えられていく透明感、あるいは全体を覆い尽くす立体的なアンビエンスが特異な浮遊感を滲ませていく様相に、直向きで慎重な音選択の感覚と明確な構築能力を感じ取ることが出来る。
クラブミュージックにおいてアナログシンセ主体のトラックメイキングが半ば大前提と化している中、本作および、例えば（M01の祖たる）KORG M1を駆使して制作をした初期ケンイシイの楽曲を顧みた際に汲める「PCM音色でしか表現し得ない徹底した無機質さ」の提示・再発見は、当時と現在とをつなぎ、寧ろ却ってシーンに新しいアプローチや存在感を浮き彫りにすることが出来る要素ではないだろうかと考えさせられる。

他方、303的な音色を盛り込んでいないにも関わらずアシッド感が滲み出るDS-10トラック「track_9」「dogma」、M01のドラムキットだけを使用して作られた野心的な作品「Mud Crab」、某レースゲーム的な楽曲と自ら言及するアッパーな「ACCELERATION」のクオリティも高く、存分に堪能出来る。今後の継続的な制作活動、ライヴ活動にも期待が高まる。

[2013.12追記]
KORG M01のメーカー・DETUNEの公式コンピレーションアルバム『KORG M01D Super Users Official Compilation vol.1』にM01Dでの新曲「umbra」が採用された。

all tracks composed by ttkk
1-2,4-7,9,11 used KORG M01
3,10,12 used KORG DS-10PLUS
8 used KORG DS-10PLUS and KORG M01
mastered, designed by odradek7743@Gadgetron Sounds