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CASIO PT-280 circuit bent diagram (Rev2) / Aysee Adaptorion
[GTRN0007/ATRD1501D   Release: 2013-07-12]

電子工作においては回路図も大して読めない素人であるAysee Adaptorionが、手持ちのCASIO PT-280を使って初の自前サーキットベンディングを行った。「興味があるのでやってみたいけど具体的にどうやれば良いのか判らない」「資料が無いのでまず何を用意して何をどうすれば良いのか判らない」といった、当人同様の初心者が挑戦してみる為の一例もしくはガイドとして、実際に行った手順等を書き記していきたい。
ちなみにCASIO PT-280の改造はSK-1と違って全く実例が無いので、全て手探りで施工した。実際やってみると簡単だが、改造に関わるリスクや事故の危険性は常について回るものなので、実施する際は施工主(Aysee Adaptorion)ならびにGadgetron Soundsは免責とし、自己責任でお願いしたい。


用意する物
本体:CASIO PT-280(今回の生贄)

電子パーツ:3P(1回路1接点)トグルスイッチ、6P(2回路2接点)ON-OFF-ONトグルスイッチ、ボリューム抵抗10KΩ・Bカーブ+ツマミ、モノラルミニジャック、ピンソケット(メス)、リード線(配線コード)

道具:ドライバー、はんだ、はんだごて、はんだ吸い取り線、ニッパー、ラジオペンチ、ハンドドリル(3mm径以上)、ヤスリ(丸型)、ピンセット、セロテープ


1.電池ボックス配線の簡易セパレート
ピンソケット(メス)を使用。やっておくとその後の筐体の穴開けや基板の改造がラクになります。蓋の赤黒のリード線が基板に達している部分をはんだ吸い取り線で外し、その箇所にピンソケットをはんだ付け。ピンソケットにリード線を挿せば電池駆動可。電池駆動はどうでもいいという場合は配線をぶっちぎってしまえばいいです。Gadgetron Sounds的には必須条件なので残しました。

2.筐体への穴開け
予めリード線を様々な場所に当ててサーキットベントするポイントを探っておいて、どの箇所をやるか定めたら、筐体の表裏のデザインと相談しつつ配置出来そうな箇所に穴を開けます。カシオトーン程度のプラスチックであればハンドドリルで簡単に穴が開けられます。ただ、トグルスイッチが5mm、ボリューム抵抗が6mm径であるのに対して手持ちのハンドドリルは3mmだったので、丸ヤスリで都度削って拡張することになりました。施工主の師範格が「一々ヤスリを使う手間を考えたらちょっとお金を出して電動ドリルを買った方が絶対にイイ」と申しておりましたが、実際その通りだと思います。幾つもの穴を延々と削るのは結構厄介な作業です。

3.マイク入力とライン入力の分岐実装 [pdf p.3]
モノラルミニジャックと3Pトグルスイッチを使用。何故必要かと言うと、PT-280には(サンプリング可能なのに)入力端子が無い為。それとスイッチ切替にする理由は、どちらも用途に応じて使いたい&使用時にどちらか一方にしなければいけない為。
内蔵マイクの青白2本組のリード線が基板左端に付いています。その部分をはんだ吸い取り線で外して、ミニジャックへ配線&はんだ付け、吸い取り線で外した箇所に再度はんだ付け。配線がちょっと面倒なので、入力が正常に通るかどうか配線のチェックを事前にしておいた方が無難です。勿論この実装だけに限った話ではありませんが。

4.音色側ピッチベンド/チューニング/再生速度実装 [pdf p.4]
10KΩ・Bカーブのボリューム抵抗を使用。半固定抵抗とその周辺を適当にショートさせてボリューム抵抗による変化を探り、適した箇所にはんだ付け。配線をした時点で該当箇所に抵抗がかかって元のピッチより下がるので、後で半固定抵抗をドライバーで緩めて正しいピッチに合わせておくと良いです。
何Kのボリューム抵抗が最適かは実際に当ててみないと判りません。500KではAカーブのような極端なかかり具合でした。

5.ピッチベンド/チューニング実装(ドラムパート) [pdf p.4]
10KΩ・Bカーブのボリューム抵抗×2、6P(ON-OFF-ON)トグルスイッチを使用。内蔵マイク-ライン入力分岐と同じような配線を2つ同時に接続するので面倒な箇所。割り込んだ時点で抵抗値が変わってピッチが上がってしまう為、OFF付のトグルスイッチを挟むことが推奨されます。これはそもそも別にやらなくても良い箇所ですけど、BPMが上がらずにドラム音色だけが良い感じにピッチ上昇するので改造する意義は大きいです。どんな音になるかはサンプルのmp3で確認出来ます。

6.割り込みスイッチ実装 [pdf p.4-5]
本件の核心。3Pトグルスイッチを使用。面白いポイントを発見した分だけ費やします。基板の表側を見てデータROMとCMOS RAM/SRAMの場所が判れば(目視で判断出来なくてもチップ型番で調べれば大概判ります)、そこを中心に割り込ませていくだけ。ICの足の隙間は小さいので、隣の足にはんだが付かないよう注意しつつ作業する必要があります。リード線の適当な箇所にセロテープを貼って固定しておいて、ほんの少しはんだを溶かす感じで付けるのがコツ。
配線済トグルスイッチの空いた足同士に更にトグルスイッチを挟んで再配線すると、oval風のより複雑な電子ノイズドローンが炸裂したりしますので、これも検討する価値があるでしょう。余談ですが猛者はスイッチで無くパッチケーブル式にします。確かにその方が自由度は高いですが、配線するのが大変かと。次回挑戦してみたいところ。

7.Rev2: 割り込みスイッチ実装2 [pdf p.6]
主に5度上に倍音が乗っかる箇所、5thで且つ5度上に上がる箇所、似非レゾナンスの箇所を追加改造します。1回路トグルスイッチを使用。CPUに近い位置を3つ分ショートさせるので充分注意してください。ミニジャック端子を使ってパッチングさせるようにした方が効率が良いような気はしますが。

8. Rev2: ピッチベンド実装(ドラムパート)2 [pdf p.6]
今度はピッチが下がる箇所を追加します。1回路ON-OFF-ONトグルスイッチを追加使用。5と同じ(はんだ付けしにくい)箇所に重ねてショートさせる形になるので若干難易度が高いです。5と同時に進めるのであれば、予め2本の配線をねじってまとめておくとやりやすいかと思います。



サーキットベンディングは行うと大変面白い効果が出るにも関わらず、何故回路図や改造方法が滅多に公開されないのか、と不思議でしたが、実際やってみると「そもそもそんな物は必要無いから」というのがサーキットベンダーの共通解に極めて近い気がしました。何せ電子工作に全然詳しくない、義務教育でちょっとはんだを握った経験があるという程度の素人でもやれてしまうぐらいですので。
それとサーキットベンディングの魅力とは、音が出る電子機械であればどれも今回と同様の感覚で改造が出来ることと、そう多くのコストを積まずに始められることでしょうか(今回のPT-280はジャンク1000円、電子パーツの概算費用2000円強)。失敗しても大した痛手にもならず、それで既製品を自分仕様としてカスタム出来るのは大変コストパフォーマンスが高くエキサイティングなことだと思うのです。

PT-280は構造的にSK-8と似ていてチップ回りはほぼ共通なので、SK-8でも恐らく大体同じくサーキットベントが可能かと思われます。経験者の方によるご報告をお待ちしております。
CASIO Casiotone

noise, electronica


[Artist Info] Aysee Adaptorion
PortaSoundやCasiotone等の80年代家庭用ミニ鍵盤(とそのサーキットベンディング)、monotronやSX-150markIIといった電池駆動/ACアダプター使用ガジェット楽器を主力にして作曲活動を行うodradek7743の別名義。ジャンルの守備範囲はノイズ/インダストリアル、エレクトロニカ、エクスペリメンタル。好きなエフェクターはディレイとファズ。
Twitter: @odradek7743
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