Gadgetron Sounds : is unique netlabel for any mobile gadget instruments and all that lovers
Catalog
Detail
256lights / tac_
[GTRN0009   Release: 2013-12-21]

vocaloidとTENORI-ONを主軸に、様々なコンピレーションの企画や楽曲提供で活動を展開しているtac_による、「元素」をテーマにしたYAMAHA TENORI-ON縛りEP。

氏はエレクトロニカでも特に素朴な響きや美しさを強調するフォークトロニカ/トイトロニカといった音響系を得意としていて、自身主催のコンピレーション『songs_of_moonlight』や当レーベルの『Gadgetron Sounds label sampler: first season』に収録された「magnesium」でそれが充分に示されている。演奏面に於てもCLA主催『TOKYO PRIZE』授与式でライヴを行うなど、TENORI-ONプレイヤーとしての実力の高さも伺える。聞いたところでは、作曲活動を始めた頃から既にニカ指向であった分、自分の音楽表現をするのに丁度良いあつらえ向きの楽器だったとのこと。

さてこのYAMAHA TENORI-ON――電池駆動可能なガジェット楽器の中では価格面と機能面双方において非常にリッチな類のプロダクト、演奏により視覚的な演出を盛り込む為のLEDボタンインターフェースは傍目では扱いが難しそうに見えるものの、実際には規則性が高く、破綻が生じないよう非常に細かくチューニングされている。ワンショット程度のサンプルプレイバック機能もあるので、即興を中心とした演奏は勿論、きちんとした楽曲制作にも申し分無く使える機材である。
楽曲制作においては、演奏モード別に分けられた16枚のレイヤー(トラック)を1ブロック単位として、そのレイヤーやブロックの組み合わせによって構築していくスタイルになり、シークエンス編集や演奏に特化したレイヤーの他、描画するだけのレイヤーもある。特筆すべき機能として、リアルタイムで演奏した手順をそのまま全てデータとして記録出来る(またそれをユーザー間で交換し合える)点が挙げられる。「oxygen」「neon」のデータは本文下部のリンクで配布、また「oxygen」「magnesium」「francium」の3曲は動画としても公開されているので、TENORI-ONならではの視覚効果も含めじっくり御覧になって頂きたい。

このEPの楽曲にはそれぞれに元素名が付いている。ある程度は恣意的な命名であるかもしれないが、楽曲とその名前を照らし合わせると、実に興味深い関連性が見えてくる。例えば「cobalt」では、化合に因って青や緑や黄色の顔料になるコバルトの通り、徐々に折り重なり混じり合う色彩の様相が沢山のシークエンスパターンで表現されている。シークエンスの濫用は楽曲を散漫とさせるものだが、それを重いサイン波ベースでシンプルな導線を通すことに依って全体の統一感を持たせている。
ペンタトニック主体のオリエンタルな響きを持つ「gallium」は、青色LEDの材料でありながら30℃未満の融点(沸点は約2700℃)という風変わりな金属の性質を擬えたかのような曲調であり、気泡の立ち上るアクアリウムを想起させる優美なアンビエント「oxygen」ではアタックの弱いパッド系を中心とした至極シンプルな構造を以て浮遊感を醸し出す。
EPの最後を飾る「francium」では、サンプリングしたワブルベースをそのままダブステップ然と使ったりはせず、メカニカルなシークエンスパターンとして用いており、それは恰も自然元素と合成元素の境目を示すようである。他の楽曲よりも動的なコード進行、拍子に関係なくレイヤーをループさせられる仕様を活用したポリリズムも重元素に見合う構造と言えるのではないだろうか。
全体を通じてサイエンティフィックな印象がありつつも、一聴しただけで判る馴染みやすさと柔らかな包容力は、作曲者と楽器との安定した化合の結果と言えるだろう。

本作は2013年秋のM3で頒布された『Elementronica EP』から、それを踏まえて来年リリースが予定されているTENORI-ON/TNR-i/TNR-eオンリー・フルアルバムへとつながる予告編的な位置付けになっている(※)。また元素ということで、現在118ある元素周期表の一体どれだけを楽曲化していくのかも、今後の楽しみの一つになるかもしれない。    ※『elementronica』として2014/4にリリースされた。
TENORI-ONユーザーやエレクトロニカ/音響系に興味のある方々以外にも、是非この優しく柔らかい音楽に浸ってほしい。


Bonus Contents:「oxygen」「neon」TENORI-ONデータ(TNR-W・TNR-O・TNR-i対応)

all composed, mixed and mastered by tac_
except some sequences of 'gallium' based on a odradek7743's improv
jacket illustrated by 白熱灯 (http://hacne.tumblr.com/)




YAMAHA TENORI-ON

electronica, ambient


[Artist Info] tac_
普段はニコニコ動画などでボーカロイド・アンダーグラウンド界隈に生息。
ブラックコーヒーを飲みながらの甘いものや、エレクトロニカと変なものを好む。
TENORI-ONは廉価版のTNR-O発売と同時に購入。
その魅力に捕らわれてTNR-Wも購入という遍歴。
その後iPadアプリのTNR-iや二台目のTNR-W
最近新発表のTNR-eも仲間入りし、じわじわと勢力拡大中です。
Twitter:@tac_403
>> official website(1)   >> official website(2)